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弁護士・公認会計士 洪 勝吉
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前回は少数株主にどのような権利が認められるか、その権利の一部の概要を確認しました。
辞めさせられた取締役であっても、株主である以上は株主としての権利が認められます。
今回は情報の開示請求の中でも問題となりやすい、会計帳簿等閲覧謄写請求について見ていきます。
【目次】(2022.08.01)
1.会社法の定め
2.株主としての権利行使に関係する理由の明示
3.理由の具体性
4.開示対象となる資料の判断は慎重に
会社法は、3%以上の株式を有する株主は、会社の営業時間内はいつでも、その理由を明らかにした上で、会計帳簿や会計帳簿に関する資料の閲覧謄写請求ができる旨を定めています(法433条1項)。
そして、会社がこの請求を拒絶できる場合は、株主としての権利行使に関係しない濫用的な目的である場合や、株主が会社と同業を営んでいる場合などに限られています(同条2項)。
そのため、3%以上の株式を有する株主が、株主としての権利行使に関係する理由を明示し、この株主が同業を営むものでない場合は、会計帳簿またはこれに関する資料については、閲覧または謄写に応じる義務が会社に生じることになります。
会計帳簿等閲覧謄写請求は、株主の地位と無関係な権利の行使のために行うことはできません。例えば、前々回にみた取締役の不当解任についての損害賠償請求権を行使する目的で、その資料収集のために行うことは、株主の地位と関係するものではありませんので、会社は開示を拒絶することができます。
他方で、株式を売却することに備えて株価を算定する目的といった、会社全体の利益というよりは、株主個人の経済的利益を図る目的でも、株主の権利行使のために行われたものに当たりますので、会社は開示を拒絶できません。
株主の権利は、究極的には株主の経済的利益の追求のために認められた権利ですので、株主自らの経済的利益の追求のために行使することも許されると考えられています。
また、株主が会社の財政状態等を確認し、誤った経営についての疑いを調査するといった理由は、株主の権利行使に関係するものと認められます。ただし、株主は、取締役の特定の行為が違法又は不当である旨を具体的に記載する必要があります(そのような行為が実際に存在したと証明する必要まではありません)。
開示義務の存否や、開示対象となる資料の範囲を会社が判断できるようにするとともに、株主等による探索的・証拠漁り的な閲覧等を防止する必要があるためです。
そのため、「会社財産が適正妥当に運用されているかどうか調査するため」といった抽象的な記載では、請求の理由を明示したことにはならず、会社は開示を拒絶することができます。
閲覧謄写請求の理由について見てきましたが、時価算定目的などでも請求理由になると理解されていますので、株主が同業者である場合(拒絶事由になります)といえる場合でなければ、閲覧謄写請求を完全に拒絶することは難しいというのが実際です。
ただし、そうは言っても、どのような資料でも閲覧謄写に応じなければいけないというものではありません。
例えば、取締役の特定の行為を問題として閲覧謄写請求がなされた場合には、その理由とされた特定の行為に関係する会計帳簿や契約書、発注書などは開示対象になりますが、それ以外の資料は対象になりません。
株式の時価算定目的で閲覧謄写請求がなされた場合には、特定の取引に関する契約書などは開示対象にならないことが多いでしょう。
このように、請求の理由との関連性で開示対象となる資料が決まります。
そのほかにも、よくある例としては、株主から法人税申告書や月次試算表、預金通帳などの開示を求められることがあります。
会計帳簿以外で開示の対象となる資料は、会計帳簿を作成する材料となった資料その他会計帳簿を実質的に補充する資料ですので、通常、法人税申告書や月次試算表、預金通帳の開示義務は生じません。
開示対象とならない資料を開示すると、無用な紛争を誘発するおそれもありますので、拒絶事由がない場合でも、開示する資料については慎重に判断する必要があります。
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