札幌市で企業法務・債権回収・事業承継を弁護士・会計士に相談するなら

 弁護士・公認会計士  洪 勝吉

 〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西10丁目 南大通ビル2F
 (
札幌市営地下鉄東西線 西11丁目駅直結 専用駐車場:無し)

経営を強くする法律・会計のページ

M&A取引のトラブル実例(1)

中小企業のM&A取引においても、そこで締結される契約(株式譲渡契約、事業譲渡契約など)は、相当に詳細な内容が盛り込まれることが多いです。
ただ、どういったトラブルが起きるのか、契約の条項がどのように機能するのか、具体的なイメージを持つことはなかなか難しいかもしれません。
今回は、M&A取引のなかで起こったトラブルの実例を見ていきます。

アドバイザリー報酬に関するトラブル

一つ目はアドバイザリー報酬に関するトラブルです。
M&A取引では、仲介業者やコンサル業者に対する報酬が多額に生じる場合があります。
この報酬の支払いを減らすため、M&Aに関する基本合意後に、売り側が、報酬の一部をM&Aの対象企業(売り物の会社=対象会社)に負担させて問題となった例があります。
 

買い側の視点

売り側が負担すべき報酬額の一部を、対象会社から支出させた場合、実質的には買い側が、売り側の報酬も負担することになりますので、買い側からすれば、このような二重負担が不合理であるのは明らかです。
 
買い主側としては、最終契約前に行うDD(デューデリジェンス)において、不適切な支出がなされていないか確認します。
しかし、最終の決算日以降、譲渡日までの間に、対象会社において不適切な支出が行われたような場合には、DDの深度によっては、調査が及ばないことも考えられます。
そこで、契約上の対処としては、このような支出を防止するために、基本合意の段階で、「基本合意以降、買い側の事前の書面による承諾なく、対象会社をして通常の業務の範囲内で行われるもの以外での事業もしくは資産の全部又は一部の処分等を行わせない」といった内容の法的拘束力のある合意を行っておくと、基本合意後の不適切な支出をカバーすることができます。
さらに、最終契約においても、「貸借対照表等の資産及び負債には実在性及び真実性があり、譲渡日前の原因に基づく資産の重大な滅失・毀損等は存在しない」といった内容の表明保証条項を付して、これに違反した場合には損害賠償や補償の責任が生じる旨を定めておくと、買い側に知らされなかった不適切な支出のカバーになり得ます。
 

売り主側の視点

売り主としては、アドバイザリー報酬の支払いが、どのような条項に違反する可能性があるのか、アドバイザリー業者に十分に確認することが必要です。
不適切な処理が一つでもあれば、買い主側からの信用をなくし、取引の成立が危ぶまれることや、取引成立後に目論んでいた業務提携などがなくなることも考えられます。
このトラブル事例では、クロージング後に問題が発覚したため、M&A取引自体は成立しました。しかし、M&A成立後の対象会社からの受注を見込んでいたにもかかわらず、この問題の発覚により、M&A後の取引はなくなってしまいました。
 
クロージング後の義務(本件では、最終契約にM&A後の取引の概要の取り決めはなされていました)については、最終契約に条項を置くことは珍しくありません。
ただ、株式譲渡の完了後にクロージング後の義務に違反したとしても、株式譲渡を行わないとすることはできず、契約解除も制限・禁止されていることが多いです。
そのため、クロージング後の義務違反に対する措置については補償請求に限られることになり、売り主にとって、クロージング後の業務等に重要性がある場合には、これについての義務違反に関する補償条項を定めておくことも考えられます。
 

アドバイザリー会社の視点

今回の売り主側のアドバイザリー会社としては、売り主が表明保証条項に違反する可能性が生じるときは、表明保証違反等を問われるリスクに関して適切な注意喚起(説明・助言等)を行う善管注意義務を負うとされるでしょう。
今回の事例に関して言えば、表明保証条項等に違反しかねない報酬の受け取り方は避けるべきであったと思われます。
現に、実際の事例では、売り主とアドバイザリー会社との間で訴訟となっています(アドバイザリー会社は注意喚起を行っていたとして損害賠償請求は棄却)。
 

お気軽にお問合せ・ご相談ください

お電話でのお問合せはこちら

011-596-7944
受付時間
9:30~18:30
定休日
土曜・日曜・祝日

フォームでのお問合せは24時間お受けしています。

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

011-596-7944

<受付時間>
9:30~18:30
※土日祝は除く

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

こう法律会計事務所

住所

〒060-0042
北海道札幌市中央区大通西10丁目
南大通ビル2階

アクセス

札幌市営地下鉄東西線 西11丁目駅直結 駐車場:無し

受付時間

9:30~18:30

定休日

土曜・日曜・祝日