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 弁護士・公認会計士  洪 勝吉

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ハラスメントの申告を受けたとき

今回は、セクシャル・ハラスメントの被害申告を受けたことを想定して、会社としてどうするべきか、その対応方法を見ていきます。

セクハラに関する法令上の定め

セクハラとは、職場において行われる、労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者がその労働条件について不利益を受けを受けたり(対価型セクシャル・ハラスメント)、労働者の就業環境が害されること(環境型セクシャル・ハラスメント)です(男女雇用機会均等法11条1項)。

事業主は、セクハラに関する労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じる義務(セクハラ防止の措置義務)があります。
そして、セクハラ防止の措置義務については、厚生労働省による指針(セクハラ防止指針)が定められています。

セクハラには、同性に対するものも含まれますし、被害者の性的指向又は性自認は関わりません。
また、勤務時間外の宴会や懇親の場などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当します。セクハラの行為者(加害者側)には、雇用主、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客、患者又はその家族、学校における生徒等もなり得るとされます。

 

事前の義務

セクハラ防止指針では、次のような措置が求められます。セクハラ防止指針に具体的な例についても記載がありますので、確認してください。

・職場におけるセクハラの内容及び職場におけるセクハラを行ってはならない旨の方針の明確化とその周知・啓発
・セクハラ行為者への厳正に対処する旨の方針、対処内容の規定化とその周知・啓発
相談窓口の設置とその周知
・相談窓口の担当者の対応の適切化

セクハラ行為者への懲戒処分の有効性が問題となった判例(最高裁判所平成27年2月26日判決)においても、セクハラ防止に関する研修を定期的に行い、全従業員に参加を義務付けることや、セクハラ禁止文書を作成して従業員に配布し、職場にも掲示するとなど種々の取組が行われていたことが、会社側勝訴(懲戒処分有効)につながっています。

 

事後的な義務

セクハラに関する相談等があった場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認することが求められます。
そして、セクハラの事実が確認できた場合は、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う必要があります。
さらに、セクハラ行為者に対する措置を適正に行うことや、再発防止に向けた措置を講ずることが求められます。
これらの際には相談者や行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずることや、その措置を周知しておく必要があります。

事後的に適切な対応を行うことは非常に重要です。
相談窓口を設置していたとしても、相談窓口で不十分な対応に終始すれば、会社が被害者に対して損害賠償責任を負うことがあります(横浜地方裁判所平成16年7月8日判決など多数の事例があります)。
適切な対応ができれば、被害者からの訴訟の防止にもつながります。相談窓口の担当者は、相談者の心情などに配慮した適切な対応が求められますので、相談対応研修を定期的に受講させることも有用です。
 

調査の流れ

事後対応において重要な点は事実を適切に調査・認定することです。
調査は、相談者のヒアリング、メールやLINE、録音、写真などの客観的証拠の収集、目撃者等の第三者のヒアリング行為者のヒアリングといった流れになることが通常です。
行為者のヒアリングは、証拠隠滅の危険があるため、最後に行うことが多いでしょう。

● 相談者のヒアリングの際には次のような点に留意が必要です。
・いつ、どこで、誰が、何を、どのように、どういう理由で、といった具体的な事実関係を把握します。ただし、話をすること自体に心理的に抵抗が生じることも十分にありますので、被害の内容を踏まえて相談者の心情に配慮して二次的な被害にならないようにします。
・相談者にも問題があるといった評価を述べることはしません。事実関係を確認することが肝要です。認定した事実や、それに対する評価は、調査の最終段階で行われるべきものです。このようなことを述べると相談者から情報を取得することが困難になり調査に支障が生じます。
・セクハラ事案では同意があった可能性を考慮に入れておくことは必要です。恋愛関係にあった可能性を予め排除することはできません。事実関係を淡々と確認しつつも、当初から予断を持つと事実認定を誤らせることになります。
・調査の担当は同性にするなどの配慮は必要です。また、プライバシーに関わるため最小限の人数にすることがよいです。
秘密が守られることや、想定される今後の流れを説明します。今後の処置については、相談者の意向を確認しておきます。暫定的な措置として、業務内容を変更するなどして、行為者と物理的に離すようなこともありえます。

● 次に客観的証拠の収集や、目撃者などがいればヒアリングを実施します。
・メールやLINE、録音、写真など最近の事例では客観的な証拠が残っていることは多いです。特にセクハラの事案では、メールやLINEが存在するケースがままあります。これらは、事実認定の際に強い証拠となります。メールについては、一方が発信したものだけでなく、双方のものを収集することが望ましいです(行為者ヒアリングの際に収集することもあります)。
・相談者のプライバシーを確保するため、第三者にヒアリングするに当たっては、事前に相談者の承諾をとることがよいでしょう。

● 行為者のヒアリングの際は、次のような点に留意しましょう。
・先ほども述べたとおり予断を持ってはいけません。行為者が説明する事実関係をまずは淡々と把握するように努めます。
・行為者の側からもメールやLINEなど客観的証拠を収集します。相談者からは、相談者が発信したメールなどは提供されないこともあります。
・収集した客観的証拠との矛盾などを突きつけるのは、行為者の説明を十分に把握した後にしましょう。

以上を踏まえて、事実を認定し、法的な評価を加えることで、懲戒処分の要否等を検討します。

懲戒処分の量定など

先ほど挙げた最高裁判所平成27年2月26日判決は、1年余りにわたり複数の派遣社員に対して極めて露骨で卑わいな内容の性的な発言等を繰り返したというものでしたが、身体的接触はありませんでした
会社は、重い人で出勤停止30日等の懲戒処分を行い(行為者が複数でした)、これに伴って降格という人事上の措置も下されたというものです。
最高裁は、前記の会社の事前の措置の内容や、退職を余儀なくされた従業員もいるという結果の重大性を踏まえて、出勤停止の懲戒処分が、懲戒権を濫用したものとは言えず、有効としました。

原審である大阪高裁は、明確な拒否の姿勢を示されておらず、許されていると誤信していたことや事前に警告や注意等を受けていなかったことなどから懲戒処分が重すぎて無効と判断しましたが、最高裁は、このような事情を有利にしん酌することは許されないとしました。

ともすると、言葉によるセクハラについては、身体的接触によるセクハラに比べて軽視される風潮があるとも言われています。
最高裁としては、通常の社会人であれば当然に不快に思うような言動については、拒否の姿勢が明示されていなくても、懲戒処分を軽減する理由にはならないとしたことは重要です。
会社側としては、当初は注意・指導にとどめてその改善状況を見極めることや、戒告、減給等と段階を踏んだ処分を採ることも許容されるとも解されます。
相談窓口に相談しやすい体制を整備することで、重大な結果が生じる前に、セクハラ行為の態様として軽いと評価できるうちに注意等をすることができるようにしておくことが、会社側としても提訴されるリスクが軽減できますし、良好な就業環境の維持につながって人材の活用にもつながります。

 

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