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弁護士・公認会計士 洪 勝吉
〒060-0042 北海道札幌市中央区大通西10丁目 南大通ビル2F
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前回は議長の役割について確認しました。
今回は、実際に株主総会を開会するところまでの注意点などを見ていきます。
【目次】(2022.10.2)
1.株主総会開会の宣言
2.定足数についての報告
3.事前の委任状取得
4.受付事務
4.1 株主本人の来場
4.2 代理人の来場
4.3 法人株主の場合
4.4 株主の親族が来場した場合
株主総会の開始時刻は、招集通知に記載されていますので、その時刻がくれば、定められた議長が開会を宣言し、株主総会が始まります。
開始時刻を招集通知記載の時刻より早めることはできません。
開始時刻になっても、出席した株主の有する議決権の株が定足数に満たない場合には、定足数に達するまで株主の出席を待ってから開会します。交通事情や、天候などの理由により株主の来場具合が悪いと判断したような場合も、同様に開会時刻を遅らせることは可能です。
ただ、数十分以上といった単位で開会を遅らせる場合には、議長が出席している株主に事情を説明し、開会予定時刻を示して、了解を得たほうが無難でしょう。
開会の宣言は、開会時刻の到来とともに、株主総会での審議採決ができる状態になったことを明らかにする意味もあります。
定足数が定められている議題については、定足数を超える株主の出席がなければ、議題の審議採決ができません。
普通決議については、会社法では議決権の過半数を定足数と定めていますが(法309条1項)、多くの会社では定款でこの定足数を排除していますので、1株分でも出席があれば普通決議が可能です。
普通決議であっても、取締役・監査役の選任、取締役の解任については、定足数を完全に排除することができません(法341条)。
また、特別決議を要する議案(監査役の解任(法309条2項7号、343条4項)、定款変更(法309条2項11号、466条)、合併契約等の承認(法309条2項11号、783条1項、795条1項、804条1項)など)についても、同様に定足数を定款で完全に排除することはできません。
そのため、定足数を要する議案がある場合には、その議案の上程に先立って、株主の出席状況を明らかにし、定足数を満たしている旨を議場で報告します。慣行的に、開会を宣言した直後に、株主の出席状況を明らかにし、あわせて定足数を満たしている旨を報告することが多く、議案ごとに行うことは多くありません。
ただ、定足数は議案の採決時点で充足している必要がありますので、株主が途中退場したことにより、採決時点で定足数を割るような場合は、有効に議決をすることができません。
議案の定足数を満たすかどうか微妙な場合や議案の採否が拮抗しているような場合には、議案の採決時点の出席株主の議決権数を正確に把握する必要がありますので、途中退場する株主について正確に把握し、出席株主数から減算する必要があります。
株主の出席状況については、事前に取得する委任状や、総会当日の受付の事務により把握します。
中小企業の株主総会では、株主に招集通知を発送する際に委任状を同封し、欠席する場合には委任状を返送するよう求める例が多く見られます。
この場合は、受任者欄は空欄とされることを想定することが多く、空欄でよい旨を付記することもあります。そして、現に空欄のまま返送された場合には、誰を代理人にするかは会社に一任する趣旨と理解できます。そこで、会社は、適宜の者を代理人として選定し、選定された者が株主の代理人として出席して議決権を代理行使することになります。
返送された委任状が「代理権を証明する書面」(法310条1項)といえるか確認する必要がありますが、招集通知に同封した委任状が使用されている場合には、株主自ら作成した可能性が高いと言え、真正なものと扱えば合理的です。
他方で、私製の委任状が送られてきた場合には、必要に応じて株主に連絡するなど合理的な方法で、作成の真正を確認する必要があります。
受任者欄に特定の第三者の氏名が記載されている場合、その第三者が現に来場すれば、代理行使を認めることになります。来場しない場合には、代理行使はされない(単なる欠席)ということになり、会社が特段の措置を講じる必要はありません。
株主総会当日の受付では、来場者に氏名や住所を確認し、株主名簿等の株主のリストと照合して、一致する者があれば来場を認めるという方法が一般的です。なお、書面投票制度を採用している場合には、議決権行使書面を持参した者を株主として入場させる取り扱いが通常です。
代理人と称する者が来場した場合には、代理権を証する書面(委任状)を確認します。委任状が事前に提出されていなければ、委任状を当日提出させ、真正に株主によって作成されたものか確認することが必要になります。
代理人を他の株主に限定する会社は多いですが、このような場合には、代理人が株主であることを確認します。
法人株主の場合は、従業員などが代行者として出席し議決権を行使することができます。
これは代理人を「他の株主」に限っていたとしても同様です(最高裁昭和51年12月24日判決)。
法人株主の従業員等であることは、社員証や名刺の提出などで確認することが多いと思われます。
株主の親族と称する者が来場したときは、法定代理人(未成年者株主の親など)であることが確認できれば、議決権の代理行使を認めます。代理人を「他の株主」に限っていたとしても同様と考えられます。
一方、法定代理人でない親族である場合は、株主から委任を受けた者でなければ代理人としては認められません。代理人を「他の株主」に限定している場合には、その親族も株主であることが必要であるというのが原則的な取り扱いになります。
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