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 弁護士・公認会計士  洪 勝吉

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中小企業が売り手になるM&A取引でトラブルが生じる訳

中小企業のM&A契約についてトラブルが相次いでいる旨の報道が複数ありました。(リンク先参照
このような事態が起こる危険性が高い理由を考えてみます。
 

囚人のジレンマ

どんなゲーム
経済学や経営学にゲーム理論というものがあります。
ゲーム理論は、意思決定がどのように行なわれるかを考察する分野です。
その中で知られたものに「囚人のジレンマ」というゲームがあります。
A社とB社の2社の間で、次のような利得表の取引をすることを考えます。
両者に「契約を守る」、「契約を守らない」の2つの選択肢があります。
A社もB社も「守る」ときは、AもBも1の利得が得られます。
Aは「守る」、Bは「守らない」のときは、Aを出し抜いたBが5の利得を得て、Aは5の損失を被ります。
逆の場合は、利得が逆になります。
AもBも「守らない」ときは、A社もB社も1の損失を被ります。
 

どんな選択をする
この利得表を前提とすると、A社とB社はどのような選択をするでしょうか。
A社から見ると、B社が「守る」ときは、A社が「守る」だと利得1、「守らない」だと利得5となって、A社としては「守らない」ほうが利得が多くなります。
次に、B社が「守らない」ときは、A社が「守る」だと利得-5、「守らない」だと利得-1となって、このときも、A社としては「守らない」ほうが利得が多くなります。
以上から、B社がどのような選択をするにしても、A社としては契約を「守らない」方が合理的だということになります。
これはB社の立場になっても同じですので、A社がどのような選択を取るにしてもB社としては契約を「守らない」ほうが合理的となります。
したがって、このゲームではどちらも「守らない」を選択することになり、どちらの利得も-1です。
 
本来は、どちらも「契約を守る」を選択して、どちらも利得1を獲得するのが最も望ましい結果になるにも関わらず、合理的に判断するとどちらも「守らない」を選択せざるを得ないという「ジレンマ」が生じるのがゲーム名の由来です。
 

中小企業が売り手のM&Aは一回限り

囚人のジレンマの場合、一回限りの取引では双方が契約を守らない選択になりますが、これが継続的に何度も行われる取引では、双方が契約を守るという選択が合理的になるケースがあることが知られています。
これは直感的にも理解しやすいのではないでしょうか。1回限りの取引では相手を出し抜こうとの考えが生じがちだとしても、継続的に何度も取引する可能性があるのであれば、将来を考えてお互いに「契約を守る」選択肢を取ったほうが得であるとの判断はあり得ます。
 
しかし、冒頭に述べた中小企業が売り手になるM&A契約は、売り手側としては、通常一回限りの取引です。
そのため、売り手側としては、売り手の中小企業を出し抜いて利得を大きく取ろうと買い手がしているのではないかとの疑念を持つ必要が大きいということを、売り手の中小企業としては理解しなければいけません。
 

クロージング後の義務を守らせる手立て

契約違反が生じた場合には、契約を解除することができます(民法541条)。
契約を解除されたくないとすれば、契約を守ろうというインセンティブになります。
 
中小企業が売り手になるM&Aでは、経営者保証の解除が問題となる例が多いと報道されています。
経営者保証の解除は、M&A取引の実行(クロージングと呼ばれることが多い)後の誓約事項として、契約書に盛り込まれることが多いです。
ただ、クロージング後の義務というのが問題で、M&A契約では通常、クロージング後には契約の解除ができないと定められており、救済方法が基本的に損害の補償に限定されてしまいます。

損害賠償請求などは、損害を受けた側が積極的に裁判所に申立てをしたり、契約違反や損害を証明したりする負担がかかりますし、損害額を超えて賠償を求めることもできません(上の表の例では-5の損害の賠償が最大限)
そのため相手方に契約を守らせるインセンティブとして十分でない場合があるため、報道されているような被害が生じてしまっており、いざというときには、取引を成立させないという選択を取る(ことができる)ようにしておくことが重要です。
 

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