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 弁護士・公認会計士  洪 勝吉

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退任役員に退職慰労金を支給したいときの注意点

退任役員に退職慰労金を支給することは、頻度としてはそれほど多くはないと思いますが、慣れない手続を行う場合には慎重に準備する必要があります。
株主総会の手続に法令違反があると総会決議の取消しの事由(会社法831条)に当たることにもなりかねません。
非公開会社で取締役会・監査役を設置する会社を例にして確認していきます。

 

株主総会決議が必要

取締役に対する退職慰労金は、取締役の職務執行に対する功労加算とともに報酬の後払いとしての性格を持つものと理解されています。
退職慰労金を支給する場合は、職務執行の対価としての報酬として、定款で定めるか、株主総会の承認決議(普通決議)をする(会社法361条1項)と理解するのが一般的であり、実務の運用です。
そして、退職慰労金の金額を定款で定めている会社はほとんどないと言われており、株主総会決議によることが通常です。
 

株主総会前の準備

議案の内容(一任決議)

株主総会決議をする際は、総会で具体的な金額を定める議案ではなく、取締役会に支給額を一任する内容の決議にすることがあります。
しかし、取締役の報酬に株主総会決議を必要とする趣旨は、取締役の報酬金額を取締役自身が決めることによる「お手盛り」の弊害から株主を保護するためと考えられていますので、取締役会に無条件に一任する決議は認められません
判例上は、株主総会の決議において、明示的もしくは黙示的にその支給に関する基準を示し、具体的な金額、支払期日、支払方法などはこの基準によって定めるべきものとして、その決定を取締役会に委ねることは許容されています(最高裁昭和39年12月11日判決、最高裁昭和44年10月28日判決)。
 

支給基準の備置き

退職慰労金の支給に関する基準については、取締役のお手盛りを防止できる程度に具体的で明確な一定の基準が存在することが必要です。
古い判例では慣行も支給根拠の一つに示すものもありますが、明確にするために退職慰労金支給規程を作成しておくことが望ましいでしょう。支給規程は業務執行の一環として取締役会で定めます

現行の会社法では、退職慰労金支給に関する基準について、株主総会参考書類にその内容を記載するか、その基準を各株主が知ることができるような適切な措置を講じることが必要と定められています(会社法施行規則82条2項など)。
実務上は、退職慰労金支給規程等を本店に備置き、株主の閲覧に供することが行われています。
 

招集通知の記載

書面投票を採用しない会社は株主総会参考書類を株主に送付する必要はありませんが、退職慰労金の支給を決議する場合には、招集通知に「議案の概要」を記載する必要があります(会社法298条1項、同299条4項、会社法施行規則63条7号ロ)。

「議案の概要」については株主総会参考書類の記載を参考にすることが多いため、この場合は、退任役員の略歴(会社法施行規則82条1項4号)や支給基準の内容(同規則82条2項本文。上記の適切な措置を講じるときは不要(同ただし書))を記載します。
 

株主総会における注意事項

株主総会において、議案に関して株主から説明を求められたときには、取締役等には必要な説明をする義務があります(会社法314条)。
説明義務に違反した場合には、決議方法が法令に違反するとして、総会決議の取消事由に当たることがあります。
退職慰労金に関する説明義務については、複数の裁判例があり、少なくとも次のような事項については説明する必要があるとの理解が一般的です。
○ 会社に確立された基準(規程)が存在すること
○ その基準の計算式(例:最終報酬月額×在任年数×功績倍率)に数値を代入すると、定められた範囲内で一意的に算出可能であること
○ この基準は招集通知の発送から総会まで本店に備え置かれ株主の閲覧に供されていたこと

さらに、近時の改正により、退職慰労金の支給議案を相当とする理由を説明しなければならないとされています(会社法361条4項)ので注意してください。

 

監査役の場合

監査役に対する退職慰労金の決議についても基本的には上記と同様です。
ただし、監査役は取締役からの独立性が求められますので、一任決議をする場合は、取締役(会)ではなく監査役の協議に一任したほうが問題となりにくいと考えられます。

 

支給額について

株主総会で承認決議が得られれば、支給額については会社法上の制限はありません。
ただ、役員に対する退職慰労金の額が「業務に従事した期間、その退職の事情、・・同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし」、不相当に高額な部分は損金不算入となります(法人税法施行令70条2号)ので、注意が必要です。

役員退職給与適正額の算定方法にはいくつかの方法がありますが、最近の裁判例には、次のような算定式の平均功績倍率法を法人税法施行令の趣旨に最も合致する合理的な方法であるとするものがあります(東京地裁令和2年3月24日判決、東京高裁平成30年4月25日判決など)。

最終月額報酬額×勤続年数×同業類似法人の平均功績倍率

最終月額報酬額は、通常、退任役員の在職期間中における報酬額の最高額を示し、在職期間中における法人に対する功績の程度を最も良く反映していると理解されます。
また、勤続年数は、上記施行令が明文で規定する「業務に従事した期間」に相当します。
そして、平均功績倍率は、同業類似法人間に通常存在する諸要素の差異やその個々の特殊性が捨象された、より平準化された数値と言えます。
そのため、これらを掛け合わせる平均功績倍率法が、同業類似法人の抽出が合理的に行われる限り、原則として、上記施行令の趣旨に最も合致する合理的な方法とされました。

会長や社長といった役職の場合、功績倍率を3.0と定めるものが多いと言われていますが、これが「同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況」を反映したものと直ちに言えるかは難しい問題で、裁判例では功績倍率3.0でも損金算入が否認された例も存在します。

例えば、TKC全国会発行の「月額役員報酬・役員退職金」や、株式会社日本実業出版社発行の「『役員報酬・賞与・退職金』中小企業の支給相場」、株式会社政経研究所発行の「役員の退職慰労金」といった公刊物を参照するなどして同業類似法人の支給状況を確認することや、裁判例の状況などについて弁護士や税理士等の専門家の意見を取得しておくことなども検討すべき場合があります。

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