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 弁護士・公認会計士  洪 勝吉

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株式譲渡等承認請求への対応

前回は会計帳簿の閲覧謄写請求への対応を確認しました。前回確認したとおり、閲覧謄写請求の理由としては、「株式を売却することに備えて株価を算定する目的」でもよいと理解されています。

多くの中小企業では、株式の譲渡に取締役会の承認を要する旨の譲渡制限が付されていることかと思います。このような譲渡制限があれば、株価算定目的が会計帳簿の閲覧請求の理由にならないとか、会社が望まない者に株式が渡ることはないと考える方も少なくないのですが、これは大いなる誤解です。

 

株式の譲渡を完全に禁止することはできない

冒頭にも述べましたが、株式譲渡に会社の承認を要するとの譲渡制限を付していても、譲渡を完全に禁止することはできません。
まず、みなし譲渡承認(会社法145条)といって、一定の場合に株式譲渡を承認したものとみなされる制度(①)があります。
次に、株主が死亡して、相続により株式が異動した場合(②)には、譲渡制限の効果が及びません。
また、株主が資産管理会社などの法人である場合(法人株主)に、合併や会社分割などにより株式が異動した場合(③)や、法人株主の株式が譲渡された場合(④)にも譲渡制限の効果が及びません。

このように、株式に譲渡制限を付したとしても、①~④のようなケースでは、経営者が希望しない第三者に株式が移転してしまう可能性は完全には排除できません。
このことを理解したうえで、想定されるリスクに対処する必要があります。

 

株式の譲渡を承認したとみなされる場合

譲渡制限株式を有する株主は、その株式を譲渡しようとするときに、会社に対し譲渡を承認するか否かを決定するよう請求することができ、併せて、不承認の場合には株式を買い取るよう請求することができます。(法136条。譲渡等承認請求)。

譲渡等承認請求を受けた会社は、2週間以内に、株式譲渡を承認するか否かを取締役会等で決定して、株主に通知しなければなりません。2週間以内に不承認の通知をしないときは、譲渡を承認したとみなされてしまいます(法145条1号)。

譲渡を承認しない場合は、会社自身が買い取るか、第三者を買取人として指定する必要があります。
会社が買い取る場合、特定株主からの自己株式の取得になりますので、株主総会の特別決議が必要です。そして不承認の通知から40日以内に会社による買取通知がなされなかった場合も、譲渡を承認したものとみなされます(法145条2号)。
この買取通知は、1株当たりの純資産額に買取対象株式数を乗じた金額を法務局に供託したうえで行わなければいけません。

なお、指定買取人による買取通知の場合は、不承認の通知から10日以内に供託したうえで通知する必要があります。

このように、譲渡等承認請求を受けた会社は、短期間のうちに、対応方針を決定し、株主総会を開催したり、供託金を準備する必要があります。純資産が手厚い優良企業の場合は、供託金も多額になることが想定されます。
会社が買い取る場合には、分配可能額(利益を配当できる限度額)を超えてはならず、分配可能額を超える可能性がある場合には、指定買取人による買取を検討せざるを得ません。

譲渡の価格について

会社または指定買取人が買取通知をすることで、株式の売買契約が成立し、売買価格を協議するものとされます(法144条1項・7項)。
そして、買取通知から20日以内に、裁判所に対して、売買価格の決定の申立てをすることができます(法144条2項・7項)。
この期間内に双方から申立てがなければ、1株当たりの純資産額に買取対象株式数を乗じた金額(供託金額)が売買価格になります(144条5項・7項)。

裁判所に売買価格の決定の申立てをした場合、法文上は「譲渡等承認請求の時における会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければならない」(144条3項)と規定するのみです。この決定には、裁判所に広い裁量があると理解されていますので、収益状況によっては供託金額を超える金額となることも想定しなければなりません。
第三者である裁判官の手に委ねることになるので、リスクが大きいと言わざるを得ないところです。

対策の必要性

これまで見たように、株式の譲渡制限だけではリスクのコントロールが不十分となるおそれがありますので、会社の状況によっては、追加の対策を講じることも検討しておきましょう。例えば、第三者に株式を保有されることになった場合には、この株式について無議決権株式に転換される仕組みをあらかじめ定めておくことも考えられます。

なお、相続人等に対する売渡請求(法174条)を定款に定めておくことも一つの対策としてはあり得ますが、分配可能額がなければ買い取りができないことは変わらず、この手当では相続の場合しか対処できません。また、意図せず、売渡請求の対象となることもあり、使い勝手がよくないことに留意が必要です。

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