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弁護士・公認会計士 洪 勝吉
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同族会社で親族の一人を取締役としたものの見込み違いであった、配偶者を取締役としたが離婚することになったといった場合、取締役を辞任してくれれば事は収まることになりますが、感情的な対立が生じているときなどには簡単に辞任してくれないことも想定されます。
そうなると、取締役の地位を解任するという判断もありうるところです。今回は取締役解任について見ていきましょう。
取締役は、いつでも株主総会の決議によって解任することができます(会社法339条1項)。
解任の決議は、通常、議決権の過半数を有する株主が賛成すれば可能です(341条)。解任の理由は問われません。
株式会社と取締役の関係は民法の委任に関する規定に従うものとされます(330条)。
そして民法上、委任契約は、いつでも解除することができるとされています(民法651条1項)ので、会社法の定めもこれと同じ趣旨と理解されています。
取締役の人数に下限がある場合がありますので、これを下回らないように注意する必要があります。
取締役会のない株式会社では、取締役は1名でも構いません(会社法326条)。
取締役会を設置している株式会社では、取締役会という会議体を構成するため、3名以上の取締役が必要とされています(331条5項)。
また、定款で取締役の人数を定めている場合がありますので、定款の定める下限の人数を下回らないようにする必要があります。
先ほども述べたとおり、取締役を解任するに当たっては、理由の有無やその妥当性は問われません。
しかし、解任について正当な理由があるとは認められない場合、解任された取締役は会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求できます(339条2項)。
これは、株主総会による解任の自由の保障と取締役の任期に対する期待の保護との調和を図ることを趣旨としたもので、取締役としての責務の遂行を期待することが客観的に難しい状況がある場合には正当な理由があると言えます。
したがって、取締役に法令定款違反行為があった場合や心身の故障のため職務執行に支障がある場合には正当な理由がある場合に当たります。
そのほかにも、職務への著しい不適任(経営能力の著しい欠如)となるべき事情がある場合には正当な理由があるとされ、損害賠償請求が認められないとした裁判例があります。
ただし、解任の正当理由については会社側が立証しなければなりません。
主観的に経営能力欠如と認識していただけでは足りず、客観的な事情が存在することを立証する必要がありますので、取締役解任に当たっては、十分な資料を収集しておくことが重要です。
正当な理由が認められなければ、損害を賠償しなければなりません。
損害としては、解任されなければ在任期間中に得られたであろう役員報酬額が典型です。
取締役の任期を10年としている会社の場合には損害が多額になることも想定する必要があります。
役員賞与や退職慰労金が損害とされる危険もあります。
比較的最近の裁判例では、会社を欠勤して他の取締役等の業務量を増加させて混乱をもたらし、取締役として出勤するよう求められても、取締役として稼働する意思がない旨を会社に明示した取締役について、解任に正当な理由があると認めたものがあります(東京地裁令和2年3月2日判決)。
実務的には、この事例のように、欠勤という、解任取締役側も否定しがたい事実があれば、比較的立証は容易ですが、経営能力不足のような評価の要素の側面が強い場合には、立証に困難をきたすことも念頭に置いて判断することが肝要です。
以上のようなリスクも考慮して解任という手段を講じるかを十分に検討する必要があります。
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